火崎勇/アンコンビニエンスでいいから


 

ビーボーイノベルズ1995.7 成神護 isbn:4882713349

 

★4<4作品の短編集。

◆アンコンビニエンスでいいから◆・・・高校の同級生もの
人に嫌われるのが怖くて人の頼みを何でも聞いてしまう川武。
みんなは便利に川武を頼ろうとするのに、大河だけは、そんな川武の優柔不断な態度にキツイ言葉を投げつける。
最初はその物言いに傷ついたこともあったけれど、最初からキツイことを言う大河には、それ以上傷つけられることはないということもあって、案外川武は大河には心を許していたが・・・。

人に嫌われるのが怖くて笑顔を作ってしまう川武の不安さと不器用さが丁寧に綴られていて、大河との恋愛話もなかなかよかったけれど、ちょっと短かったのが残念。

◆UNSTOPPABLE◆・・・サラリーマンの同僚もの
踊り子たちをクラブなどに手配する仕事柄、女に手が早いくせに、本気の恋とはいえないような関係はすぐに終わりを迎えてしまう島津。
そんな中、不運が重なったある日、踊り子に手を出すのはやめろと同僚の馨から釘をさされたのをきっかけに馨を抱いてしまう。

とんでもないことをしたと慌てる島津や、そんな島津から主導権を奪ってしまうクールビューティー系の馨とのやりとりがおもしろいけれど、このお話もかなり短く感じて残念。

◆厳寒の熱帯◆・・・社会人で音信普通になっていた元同級生同士
学生時代共にバレーボールに汗を流した仲間だったが、実力のあった中西に、羨望と嫉妬の入り混じった感情を抱いていた楠瀬は、卒業を間近にして中西への気持ちの中に恋愛感情があることを自覚し、卒業を機に中西とは連絡をまったく取らないでいた。
けれどある時友人に御膳立てされ二人は再び接触するようになる。

恋心を封じながら、それが溢れることを止められない。
側にいることを怖がりながら、中西の側を離れることが出来ない。
逃げ出しそうになるとの狭間で揺れる楠瀬。
友人に酷い言葉を投げつけてしまうところは、ちょっと苦手な展開ではあったけれど、複雑な胸中を抱える楠瀬が悩むお話としてはよかった。

◆X’masディスティニィ◆・・・広告会社の先輩後輩
ディスプレイの方で見事な力を発揮しながらも、そんな自分の力を見せびらかさない優しげな天野の元に配属された後輩・岩崎は、のっけから自分の天野への気持ちを本人に宣言し、大いに天野を困惑させていたが、あるとき天野は自分のディスプレイをライバルに盗まれてしまう。

天野がいかにすばらしいディスプレイを手がけるのか、ということを手放しで誉める岩崎を悪く思えるはずも無く、岩崎の気持ちを受け入れてしまうのだけれど、ちょっといきなり短い中でエッチにまで至ってしまうお話は、少し急ぎすぎたような感じがしてもったいなかった。

短編集ということもあって、好き度は★4.5にはちょっと満たないかな、という★4
悪くは無いのだけれど、私的には長いお話の方が好きなので。