火崎勇/カラッポの卵

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カラッポの卵 (キャラ文庫) [ 火崎勇 ]
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キャラ文庫:2003.7 isbn:419900274X

 

★4.5<高校時代は真面目で、再会したばかりの頃は、社会人のくせに仕事をサボるいい加減な男だった石動(いするぎ)。
そしてあることをきっかけに弓川の気持ちを知った石動は、何の問題もないように優しい恋人になってくれる。
けれどあまりにもトントン拍子に行き過ぎた二人の関係に、弓川が感じていた不安は的中してしまう。

潔くて物怖じしない弓川と、どの顔が本当の顔なのか、掴み所のない石動。
弓川が断片的に見てきた石動の不可解な言動の裏に何があったのかを知ってしまったときの、弓川の絶望がせつなく、そんな石動が、やっと本心を言えたシーンでは、弓川が本当にもどかしく石動が本心を見せることを待ち焦がれていただけに、本当によかったなぁと思えた。

少し石動が、自分で自主性の無さを、おかしいと思えない可哀相な男なのだ、というところを、弓川自身の中だけで消化したところが多い分だけ、話が穏やかになってしまっているようで、このあたりが今ひとつだったと思える人がいるかもなぁと思えたけれど、私的には石動が本能のままに動き出してくれたことが嬉しくて、我儘を言えるようになった石動に、弓川が従順に従うのではなく、男前な態度で自分の意見を突きつける二人の関係に好感が持てた。

ただ、せっかく一人暮らしをしたときにまで持ってきた竹刀を見られそうになる、というフリがあるのに、オチがなかったかのが残念。
でも毎回本当にいろいろな目新しい切り口で話を書かれるところがすごいなぁと思えた。