火崎 勇/青いイルカ


 

★4.5<本妻の子ではなかったが本妻に子供がいなかったことで社長である父親の亡き後、新社長に就任していた樹悦司(いつき・えつじ)。
交通事故で足を骨折したが、樹をよく思わない存在がいる社内を長期に空けておくわけにはいかず、普段人をそばに置くことはよしとしない樹だったが、必要に迫られてハウスキーパーを雇うことに。

けれど不承不承だったハウスキーパーである波間光希(はま・みつき)は思いがけず拾い物で、樹の生活に踏み込み過ぎず、ちょうどいい距離感で接してくれる。
それでも最初は好奇心の強かった感情も、いつも穏やかな表情の裏に繊細で傷つきやすい面を持っていることを知り愛しさが募る。

人を冷静に観察し、足元を救われないように腹をさぐり、いつも心安らぐことのない日々を送っていた樹が、唯一そばに置いてもいい、そう思えた相手。
お互い辛い過去があって、それに傷ついているのに平気なふりをしてやり過ごしていたそれまでの生活に、どうしても手放したくない互いの存在を見つけてしまった。

プライベートまで浸食されるほど懸命にヘルパーとして不自由な老人の面倒をみようとする波間を、独占してしまいたいと焦れながらも、ものわかりのいいふりで笑顔を向ける樹がせつなくて不憫。
でもちゃんと波間は樹を選ぶし、これからは本当に互いに不安を感じる間もないほどラブラブになることでしょう。

ただ、波間の周りで立場を振りかざしてしつこくつきまとい、二人の関係を知らずに自分のほうが有利だと勝ち誇るような態度をとる脇キャラは嫌。
という部分からだけではないのだけれど、全体的に振り返って、★5(-)や★4.5(+)と迷いつつも、なんとなくどれもしっくりこない気がして★4.5に。
でも立場のあるいい大人なのに、初めて執着するものができてどうしたらいいのか戸惑う樹は本当によかったです。