『ただ愛しさだけで、お前が俺を捕らえてしまった。
もう何も考えられないほど、どこにも行けないほど。』
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ショコラノベルス : 2007.3
★4.5(-)<いきなり大事にしていた花を手折ることから始まる物語。
火崎さんにしては珍しいかな、とは思いつつ、多分火崎さんのお話なので、ただ自分の身勝手な気持ちからやっているわけではないのだろう、何か事情があるのだろうと思ったらやっぱりその通りで少し安堵。
でもその理由は辛く、前半のお話ではその理由を知らされない花である佳哉も辛いけれど、隠している土佐も、そして隠さねばならない津島も、本当にそれぞれが痛々しくせつない。
後半のお話は、土佐に辛いことが折り重なり、精神的に疲弊していく中で、それでも弱音を吐くことなく過ごしていく土佐自身がどれほど弱っていたのかを、佳哉が気づかせてくれる、というもの。
年上である自分が、佳哉を守らねば、悲しませるようなことをしてはいけないのだ、と自分を追い詰める土佐が、そうじゃなくていいのだと、佳哉に教えられる。
二人の立場が逆転したように見える展開もおもしろかったのですが、弱った土佐が甘やかそうとしてくれる佳哉に、今まで我慢していた本音をやっと口に出来てよかったなぁと思える反面、甘やかそうとしてくれるのをいいことに、土佐の大人のズルさみたいなものが見え隠れしたのはご愛嬌?(笑)