火崎勇/解放

自分を見る不堂西紀の強い視線の中に、己れの『飢え』ているものを見つけた海江晶。その視線が語る思いに応えて抱き合い、自分の『飢え』が自分を好きだと言ってくれる人間のぬくもりで埋められることを知るが、反対に不堂の視線の熱は消え、「誰でもいいなら他を当たれ」そう言って去っていった。初めて得た『熱』を失い戸惑う海江。―そしてその戸惑いは、数年後の不堂との再会によって、微妙な変化をともないもう一度海江を飲み込むのだった…

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解放 (ショコラノベルス) [ 火崎勇 ]
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ショコラノベルス 1998.7 石原理 ISBN:9784883023561

 

★4.5<あまり欲のない優等生に見えて、どこか闇を抱えているような、バランスの悪さの感じられる海江は、強く欲してもらうことを望み、自分に触れてくれる温もりに飢えていた。
そしてある時、その望みどおり、自分を強く必要としてくれる高校の同級生・不堂と、気持ちを打ち明けられてすぐ、一度だけ抱き合うが、直後勝手に失望され取り残されてしまう。
それから年月を経て再会するが―――。

人と争うことを好まない海江が、不堂の態度にだけは苛つかされ、忘れることが出来ないでいる。
自分の中に抱える闇と、ただ一人向き合わせる選択肢を突きつける優しくない男。
海江が、何を抱えているのか、という謎が気になる展開の中、その海江を逆なでしながらも、そこに愛情も感じる不堂の態度。
私的に好きな、相手を焦がれてせつない感情を持つようなお話ではないものの、ちょっと毛色の変わった読み応えのあるお話だと思えたので、好き度は★4と迷って一応★4.5