火崎勇/傍若無人なアナタ

(かなり▼ネタばれ▼なあらすじだと思うのでご注意を)
ある日婚約者が見知らぬ男と姿を消し呆然とする文具メーカーの営業・小野瀬瑛人に、突然名指しで大口契約の話しが舞い込む。不審に思いながらも指定された相手の大手アパレル会社社長・鹿波創一郎の別荘を訪れるが、正式に契約をするまで強制的に足止めされ、しかも「俺と恋人にならないか」と口説かれる。戸惑いながらも鹿波の強引でワンマンだが企業家として優れた才力を知り尊敬の念を抱く小野瀬だが、偶然見つけた鹿波の写真の隣には、婚約者を奪った男が写っていて―――。大人の恋のトラップ&タクティクス。

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傍若無人なアナタ (ショコラノベルス) [ 火崎勇 ]
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ショコラノベルス:2003.1 海老原由里  ISBN:4883028127
 
★5<タイトル通りの(攻)キャラに振りまわされる、平凡に生きていたはずの男のお話し。
ご注意・・・なるべくネタばれしないように書きましたが、先入観ナシに読んだほうがおもしろいと思います。

つきあっていた恋人と結婚を考え、詳細を決めようと思っていたある日、見知らぬ男と姿を消してしまう彼女。
狐につままれたようにワケがわからない小野瀬は、とにかく彼女を探して真相を聞き出そうとするが、何故か突然舞い込んだ大口の取引のせいで、山奥の別荘にいる社長の元へ幾日も足止めさせられることに。

主人公の小野瀬と一緒になって、本当に何がどうなっているんだ!?というストーリー展開の中、小野瀬は取引相手の社長・鹿波に散々振りまわされ、ただワンマンな男かと思えば、意外に尊敬に足る人物であったり、かと思えば奈落の底へ突き落とすほどの酷い男ぶりを見せたりで、多いに戸惑わせてくれる。
けれど結局、鹿波に惹かれてしまう小野瀬が、鹿波と自分との関係を冷静に振り返り、恋人でも何でもないどころか、用が済めば大企業の社長と一介のサラリーマンの自分では、接点すらないその関係に複雑なせつなさを抱いたり、忘れたいのに忘れられない日々を送りながら追い詰められていく小野瀬が本当にせつない話しになってくる。

大きなプロジェクトのお話しとしてもおもしろく読めたけれど、何より今回のお話しでよかったのは、ラスト。
散々小野瀬を甘く苦しめた鹿波の大告白のシーン。
本当にタイトル通り傍若無人な鹿波の、子供のように我侭な言葉が、けれど、どれだけ小野瀬を強く思っているかをとてもよくあらわしていて、最後の最後に、そのシーンとは場面が変わったところでの小野瀬の「・・・時々ばかみたいに可愛い人」という内心でのつぶやきを読んだ時には、読んでいるこちらまで嬉しいのに涙ぐんでしまうような、馬鹿みたいに強く相手に思われている幸福感が伝わってきて、とてもよかった。

好き度は前半の振りまわされぶりに一瞬★4.5と迷ったのだけれど、やっぱりラストまで読んでしまえばどれもがチャラに思えるほどよかったと思うので★5に。