火崎 勇/あなたに幸福を乞う

鴇川嵐は、名門鴇川家の長男だが、厳格で崩壊寸前な家庭に嫌気がさして飛び出した。安定したかに見えた家庭だが、弟・凪の失踪をきっかけに、嵐は自堕落な生活に浸っていく。弟を守らなかった自分を責める彼は、盛り場をうろつき浴びるように酒を飲んだ朝、知らない男の前で目を覚まして!?御曹司としておべっかを使う者しか周りにいなかった嵐は、「甘えるな」ときっぱり叱責してくれる山王という謎の男に一気に惹かれていき…。苦しみ悩む嵐と山王の愛のゆくえは。
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あなたに幸福を乞う (Rose Key NOVELS) [ 火崎勇 ]
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【御園 えりい】【ローズキーノベルズ】【2011年4月刊】

 

★5<もう、久々にめっちゃ泣きました…。
痛くて痛くてせつなくて。

前半部分は「あなたに愛を乞う」の凪の兄・嵐が主人公、ということで、兄の目からの家族のこれまでが描かれていて、凪の話で事情がわかっている身としては少しくどいな、と思いながら読んでいたのだけれど。
凪が出て行ってからの嵐の苦悩。
凪が生きているかもわからず、もっと早く気付き、もっと積極的に手を差し伸べていれば結果は違ったのではなかったのかと自分を責め。
社内でも社長の息子として気が抜けず、凪のことを相談する相手もいない。
自分の立場をわきまえ、限度ぎりぎりまで酒の力を借りて、自分の抱える全てをやり過ごそうとしていたが、あるとき酔いつぶれたところを見知らぬ男に助けてもらい…。

自分を社長の息子という肩書き関係なく見てくれる年上の男・山王。
決してやさしいことは言わないのに、それでも自分を見てくれる貴重な男の存在に嵐は近付きたいと思うのに山王には呆気なく突き放される。
それでも諦めきれずにいた嵐は▼ネタばれ▼になりますが、あるとき山王が凪といるところを見てしまう。
凪の恋人と勘違いし、凪に笑顔を取り戻させたのが山王であるならば、自分は山王を望んではいけないのだと諦めるところからもう本当にせつなくて。
その後の展開ももう泣かずに読めないぐらい痛くて、あんな場面でも山王の名前を呼んではいけないのだと死ぬほどこらえる嵐が痛々しくて健気でせつなくてたまらなかったです。
思い返しても涙が出そうになるけれど、最後はもちろんハッピーエンドだし、本当にものすごく気の毒で可哀想だけれど、心底幸せになって欲しいな…と思ってしまいました。

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