火崎勇/恋愛ホメオスタシス

資産家の息子で奇麗な顔をした深沢霜は、幼い頃に遭った事故の後遺症で痛覚がない。
真面目な高校生として暮らしながらも、不良グループのメンバーとしての顔をあわせ持つ霜。
彼は、あるきっかけから、謎めいた男・龍と知り合う。
互いに自分と似通ったものを感じ、急速に惹かれあう二人。
ところがある日、龍は突然豹変し、霜を自分の部屋に閉じ込め、無理矢理身体を奪ってしまう。
そして、霜の仲間と龍の過去を知る男を殺し姿を消すのだが…。


 

リンクスロマンス 2003/10 亜樹良のりかず ISBN:4344803213

 

★4.5<火崎さんにしては珍しい高校生のお話?と思いきや、どんどん話はきな臭い雰囲気が濃くなり、中国人の裏社会の話にまで発展していく。
頭をカラッポにして読みたいときには向かないかもしれないし、あまり倫理観を強く持っていても読みにくいかもしれない。

けれど、時に愛情であったり憎しみであったり、形を変えながらも、何よりたった一人の男だけが自分を捕らえて離さない強い感情。
何を捨てても、何を失っても、ただ一人の男以外何もいらないのだ、という激しい感情。
一つのボタンのかけ違いから起こる長い戦い。
人を躊躇うことなく殺してしまえる男との危険な駆け引き。
痛覚を持たない男が初めて、唯一与えられた屈辱とセックスと快楽。
そんなことが盛りだくさんになった読み応えのある一冊。

最初はそんなにおもしろい話には思えなくてハズしたかな・・と思ったけれど、難しい話の根底に、激しくせつないけれど単純な恋愛感情があることがわかっていくのもよかったし、相手を追い詰めながら自分の身の危険も防がなければいけないスリル感も面白く読めたと思う。