オヴィスノベルズ:2002.11 杜山まこ isbn:4871825485
・あらすじ・
いつも、他人と関わることを避け、嫌なことをノーと言えない主人公の椎堂。
幼い頃のトラウマで、他人を好きという感情を素直な好意として受け止められなくなっているところに、同僚の男・三浦から告白されてしまう。
あからさまに社内でも好意を示す三浦に不快感を抱きながら、一方で成り行きから上司である旭川に強姦されたのに、何かと窮地のときに助けに来てくれることに安堵し頼ってしまう。
トラウマの原因になった幼い頃に、精神の成長が止まってしまったようなところのある椎堂は、二人の感情と行動をどう受け止めればいいのか、子供のような疑問を胸に抱えてしまう。
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・レビュー・
★5<ショップコーディネートをする
会社のリーマンものとしてもおもしろく、
また椎堂の持つトラウマに関しての話しも
上手にストーリーに絡み、
脇キャラが微妙に嫌な奴で
私的には好きになれない感じながら、
ちらりとしか出てこない女子社員と
椎堂の会話は、淡々と椎堂の心理描写の続く中で
クスッと笑わせてくれるやりとりになって、
ちょうどいいエッセンスになっていた。
また、終始、どちらかというと頼りになるが厳しい男、
という感じだった(攻)キャラのラストの台詞である、
のぞきみをしないでくださいね、という
椎堂の言葉に対する
茶目っ気交じりの返答が
何とも昔懐かしい単語だったのが、
前述の女子社員とのやりとり同様、
全体的にあまり軽いとは言えなかったストーリーの最後に、
クスッと和ませてくれる言葉になっていたと思う。
のっけから火崎さんらしい、
心の中のいろいろな疑問や気持ちを
ベースにした物語だけに、
慣れない人には、ちょっと取っ付きにくい、
地味な印象も受けるかもしれないけれど、
精神的に未熟な椎堂が、とてもよく描かれていて
私的には久々に火崎さんの本で
「よかった!!」と思える本に出会えた気がした。
勿論好き度は迷いナシの満点★5
余談ながら、毎回本編のその後を
作者さん自身のあとがきで語ってくれるので
楽しみな火崎さんの本ですが、
今回の二人のその後は本当に読みたくなるような
その後の「さわり」部分を書いておられるので、
確かに本編で十分満足したはずだったのに、
あとがきまで読んでしまえば、
何だか急にその続きまでもが
読みたくなってしまう欲求にかられて
参りました。(笑)