火崎勇/夢は夜ごとに訪れて

貧乏だが健気に生きるしっかり者の大学生・一夜(ひとよ)は、パチンコ屋で、渋い男前だがやさぐれた男・小林と出会う。小林からナンパというにはヘタな誘われ方をされ飲みに行った一夜だが、結局小林は潰れてしまう。小林をリストラされたうえ妻子に逃げられた人と思った一夜は、彼を気の毒に思い部屋に一晩泊めることに。以来小林と歳の差をこえた交流が始まるが、それは友情というには親密すぎて・・・?


 

オヴィスノベルズ 2003.8 みささぎ楓李 isbn:4871825973

 

★4.5<人より苦労しているように見えるのに、本人は案外頓着無く、何事も前向きに受け止めて、楽しく生きているような一夜。
ある日パチンコ屋でやさぐれた男・小林に出会い、成り行きで一晩泊めるが、そんな一夜の、今時の若者にない素直さに惹かれた小林は、定期的に一夜を食事に誘うようになる。

不思議な出会いの中、まるで接点のないはずの二人が知り合い、汚れた大人の世界に嫌気がさしていたらしい小林が、一夜の考え方を知るたび嬉しい驚きを発見するが、そんな一夜も、ただ無垢で素直なキャラというわけでもなく、意外に普通の大学生なのだ、という面があるのも好感が持てる。
また、オトナであるがゆえのズルさや臆病さが、とても三十代には見えないオヤジぶりを見せてくれる小林は、きっとオヤジ好きな方にはたまらないかも。

ただ二人がぎこちなく恋に落ちていくストーリーはよかったものの、小林が後半一夜を傷つけてしまい、本心を告白するくだりは、馬鹿なオトナ過ぎてちょっとズルイというか、酷いと思えてしまったので、好き度はその分少し差し引いて★4.5に。