オヴィスノベルズ : 2006.4 砂河 深紅 ISBN : 4-87182-835-2
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★4<ごく真面目に慎ましく生活をしてきた綾野辺が、ある日突然いわれのない暴力で屈辱を受けさせられた男と、仕事相手として再会してしまう。
拒絶する道を絶たれ、追い詰められる綾野辺は…。
子供のような強引さで一方的に求めてこられた気持ちから恋は始まるのか?
このあたりを許容できるかが微妙なお話かな、という印象でした。
こういう、好きな気持ちを無理やりねじ込んでくるような展開は、この著者さんにしては珍しい感じがして、どう展開していくのだろうと思ったのですが、個人的には、そういう強い強い気持ちに絡め取られてしまう綾野辺の気持ちが、本気で綾野辺を欲しがる御荘(みしょう)の気持ちと、同じく綾野辺を好きだと言いながら友人の立場としてゆっくり答えを出すことを待ってくれる片桐の気持ちと対比させたことで、本当は選ぶなら綾野辺の気持ちを尊重して待ってくれる男のほうがいいだろうと思えるはずなのに、それでも確かに綾野辺が感じたように、激しく自分を欲してくれている男の気持ちを結果的に選んでしまう気持ちもわからなくはないかな、と思えた。
あと、最後まで読んでしまえば、本当に御荘は綾野辺が好きで好き過ぎて周りが見えていないほど綾野辺に恋焦がれていたとは言え、あの始まりはいかんだろう、と思えるのだけれど、それでも最初からただ強引に突き進んできたのではなく、彼なりに最初は乙女チックな気持ちをはぐくんでいて、たまたまそれが悪いほうへ誤解してしまったという経緯があったのだとわかるし、最後の最後も、本当にあんな凶暴なことをハナからしでかすような男ではなく、恥ずかしいほど乙女チックな男なのだな、という終わりになっているため、読み返してみれば、どう考えても御荘の行動は理不尽で、綾野辺だってあんなことをした御荘を選ぶのか!?と思えなくはないのだけれど、読後感が不思議と悪く思えなかった。
好き度は★4(+)にしようか★4.5(-)もちらっと思い浮かべつつ、でもやっぱり前半の展開は微妙だろうなぁと思えて★4に。