火崎勇/その指の触れるもの

一人暮らしの祖母が倒れた!?…世話係として白羽の矢を立てられ、築百年の旧家である実家にしばらく住むことになった大学生の操。
だが、当の祖母はすっかり元気で…。
そんな操は蔵の整理をしている謎の青年と出会う。
今時珍しい和服姿の端整なその青年、冬星は実は骨董屋で、ある物を探しているというのだが…。
うっかり蔵から羽織を持ち出してしまった操はその夜、淫夢に襲われ…。
ミスティックLOVE書き下ろし。


 

アズ・ノベルズ  :2004年04月 斉藤あつめ ISBN:4872574400 

 

★4.5<主人公の操は少し前に倒れて退院した祖母の面倒をみるため、一人住まいの祖母の家に同居することになる大学生。
そこで初めて祖母の元に通い蔵の整理をしている、という若い男・冬星に出会う。
祖母が何か騙されているのではないかと心配になった操は謎の多い冬星に近づいていく。

今回は少し▼ネタばれ▼になりますが、骨董品をモチーフに物に取り付いた念やお祓いなどの出てくるお話。
絶対操と同じ大学生とは思えない落ち着きと穏やかさを見せる冬星の普段は、かっこいいというより素敵な感じ。
操が惹かれていくのも頷ける和服の似合う大人っぽさが漂っている。
それでいて内面にはやっぱり「男」としての欲も持っているわけだけれど、そういう部分を最後、操に開き直ったようにさらけだしてしまうところがまた格好よくて好感が持てた。

それから無自覚ながらとても素直な考え方をする操が冬星に惹かれていく中で、少しずつ欲を持ってしまう自分を抑えながら、せつない気持ちを募らせていくところもよかった。
好き度が満点にならなかったのは、もっと自分の欲に忠実になってしまった冬星のちょっと意地悪風な姿を見たかったからかな。