火崎勇/夜の瞳

常陸深士は事故で恋人を失って以来、自暴自棄な日々を送っていた。そんな中、仕事先のバーで自分を見つめてくる男に気づく。その男、有坂桐の物言いたげな視線の理由は何か。興味を持った常陸は有坂と同じ会社に勤め始め…。  
 

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夜の瞳 (ショコラノベルス) [ 火崎勇 ]
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ショコラノベルス : 2005.12 ISBN : 4-7781-0194-4

 

★4.5<横柄な態度で物怖じしないところがある常陸の家族関係は、良好とは言えず一人暮らし。
事故で恋人も失い傷ついていたが、自分はいつまでも傷ついたことを嘆き、慰めを待っている子供ではないと強がっていたため、傷ついた自分に誰も言ってはくれなかった言葉を、何も事情は知りはしないのに与えてくれる有坂の存在を、半分は快く思っていても半分では自分の弱さを認めることになるのが嫌で突き放した考えも持っていた。
それでも結局は有坂と接するうち、どうしてもこの男が必要だと思う気持ちを認めざるを得なくなってしまうのだが…。

▼ネタばれ▼になりますが、ようやく自分の弱い部分を認め、有坂を必要なのだと素直になった途端に有坂の態度が一変してしまうわけだけれど、さすがにそのときの常陸はかなり気の毒で、有坂のその態度の変化が唐突。
これじゃあ常陸もショックだよなぁと同情してしまったけれど、有坂の側の事情がわかってしまえば、そのときの有坂の態度ももっともで、複雑な胸中を抱えていたのだなぁとわかる。

何はともあれ、あれだけ横柄で好き勝手やっているようでいて、その実、歪んだ家族から大事なものを受け取れずに生きてきた寂しい常陸が、有坂の存在のおかげで生きることへの執着を持てるようになったこともよかったし、悪ガキのような常陸が、優しい有坂のために、あまり気の進まない譲歩をしたりするところもよかったし、二人が幸せになれればいいなぁと思えるお話だった。

ちなみに、個人的には恋愛感情を認めるまでの(攻)キャラの気持ちの動きがよく描かれた火崎さんらしいお話で嫌いではなかったけれど、強がっていた常陸の理屈っぽいあがきが、ちょっと読む人によってはくどい感じがしなくもないかな、とは思えた。