火崎勇/いつかの唇

いつか必ず現実に起こるという不思議な夢を、子供の頃から何度も見る大学生・水沢信吾。ここ最近彼が見続けているのは、見知らぬ部屋で見知らぬ男に抱かれる夢。「男に襲われるなんて・・・!」と怯えていたある日、先輩に紹介されたバイト先のレンタルビデオ店を訪れ衝撃を受ける。店長の長門岳が、なんと夢の男だったのだ!! このままでは夢が現実になってしまう!? 信吾は必死で長門と距離を取ろうとするが・・・。ラブストレンジ・イン・ドリーム☆

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いつかの唇 (ショコラノベルス) [ 火崎勇 ]
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心交社    ショコラノベルズ    2002    6    心斎橋パルコ

 

★5<幼い頃から時々気まぐれに予知夢を見ていた信吾は、そのチカラを周囲に話したことで、他人から酷い言葉を投げつけられた経験から、いつしかそのチカラの存在は秘密にするようになる。
そのことから、どこか親しい友人を作っても、自分には相手に言えない秘密をかかえているのだという負い目を持つようになってしまう。
そんなとき、男に襲われる、という不本意な予知夢を見た信吾は、現実の事態となりそうな相手とも知り合ってしまい、毎日を怯えて過ごすことになるが、誰に相談をすることも出来ず思い悩む。

楽しい予知夢であればまだしも、辛い事実が起こるのだと先に知ってしまう恐ろしさ、また、それを抱え、向き合わざるを得ない信吾の辛さが、そして、それを目の前に、どうすることも出来ない無力さを抱えるところなど、とても切実に描かれ、そんな信吾を支えることになる人物の優しさも、ただ受け入れる優しさだけでなく、上手に突き放す優しさを見せるところにも好感が持てた。

恋愛面的に、すごくせつない、というわけではないのだけれど、どうなってしまうのだろう、という不安、▼ネタばれ▼になりますが、大事な人を失ってしまうかもしれない、という恐ろしさが、少し別の意味でせつなく、読み物としておもしろい展開だと思えたので好き度は★5