あさぎり夕/無口な放浪者(ストレンジャー)

コバルト文庫:2002.10 ISBN:4-08-600165-9

愛する男と付き合うことをずっと夢見てきた男、若宮多紀。
そんな彼も、有栖川譲と出会うことで夢へと一歩近づくことができた。
しかし、多紀の性癖を知った兄・篤志は猛反対した挙句、彼を解雇してしまう。
会社の持ち物である部屋を出るはめなった多紀は、譲との生活を一時終える覚悟を決めたはずだった。
それなのに、譲の「お嫁さん候補」として、有栖川家で生活することになってしまい・・・!?


 

★5<あいかわらず、譲に見惚れながらターザンネタに脱線してしまう若宮は、笑ってしまうより引いてしまう私ですが(苦笑)、それでもやっぱり同著者さんの作品を読むのを止められないのは、今回も見事に泣かされる、せつなくて、でもよかったなぁと思えるお話しになっているから。

若宮の視点から見てみれば正論であることも、いったん相手の視点に切り替えてみれば、果たしてそれは正論と言えるのか。
男にウエディングドレスを着せることを嬉々としている小夜子の、とぼけているようでいて、深く強い、普通はなかなか真似できない愛し方。
無償の愛や、気持ちを伝える言葉の難しさを考えさせられるストーリー。

紆余曲折を経て、ようやくいろいろなことが見えた若宮が、譲を愛するからこそ、究極の選択をした潔さは、本当に涙ナシには読めないせつなさが溢れていて、本当によかった。
ただ願わくば、いいところでお邪魔が入る展開は止めて欲しい。(笑)
続きがものすごく楽しみで待ち遠しい作品。