火崎 勇/傷つかないからキスをして


 

★4.5<検察の千条と刑事の加倉井。
親しくしていると周囲に知られればいらぬことを勘ぐられる立場ではあるが二人は恋人同士。
加倉井に誘われた旅行で人里離れた温泉旅館へ着いた二人は、周囲の視線から離れてのんびりするはずだったが、旅館近くで殺人事件に出くわしてしまう。

いい加減で強引な加倉井といつも基本理性の人・千条。
けれどひとたび何かが起これば違う面も見えてくる。
豪胆そうに見えて繊細な加倉井に、情深く傷つきそうで正悪にきちんと向き合うことは当然、とする千条。
今回も千条は腹を据えれば意外に豪胆だし、加倉井の考えなどお見通しだし頼もしい。
そして何かあっても何もないと嘘をつく加倉井は取り扱いが難しい。

でも刑事としての加倉井は頭がキレてかっこいい人。
地元警察の小倉は随分最後意味ありげでしたが続巻があるのでしょうか。
千条は危機感が薄そうなので、もし小倉が本格的に千条にちょっかいを出すような話だと加倉井は苛々するだろうし個人的にもそういう展開は苦手なのだけれど…。

話は戻り、今回は表題作とは別のお話が3話。
3話のうち二つは同じ場面を千条側と加倉井側視点で描いたお話。
何気ない小道具一つでの千条の反応がすごく可愛いです。(笑)
ぜひ挿絵が一枚欲しかったところ!!

最後のお話はタイトルが「ニアミス」
どんな話かと思えば、なんと「甘えてください」の鳥海と琴川が登場!
最初はスルーしそうだったのですが、琴川の間の悪さから、「あぁ不幸体質の…」と思い出せた次第。(苦笑)
別作品のキャラが出ると読んでいてちょっと得した気分になります。(笑)

全体的に哀れな感じの殺人事件があるので前作より重くないとは思うものの明るい話でもない。
個人的に好きなせつないお話でもなく★4.5にするには足りない気もしなくはないけれど、★4にするほど引っかかった部分もない。
難しい性格の加倉井がうまく描かれているのを楽しめたかな、と思うので好き度は★4.5に。