火崎勇/芳醇な恋に

学習研究社 /もえぎ文庫/    2009年05月 /あおいれびん  isbn:4059040908

・あらすじ・

父や兄、姉の婿が家族経営している老舗酒造の息子・飛鳥井は、父の突然の死により社長として経営に関してを任されるようになる。
しかし、会社の状態はかんばしくなく、そんなとき、好意的な買収話が持ち上がるが、その相手は…。


 

・レビュー・

★4.5<とある理由から

高校時代、恋人としてつきあっていた麻生と別れ、

以来、麻生の存在は飛鳥井の心に深く傷を残していた。


その理由については

きっと…と読みながら見当がつく中、

高校時代から行動力のあった麻生は

仕事のできる男になっていてカッコイイ。

けれど意地悪な男。

 

互いの事情が混乱していて

麻生は飛鳥井に対して怒っているようだから

意地の悪い態度に出るのは仕方がないのだろうな、

と納得しつつも、

ちゃんと理由がわかってしまうまでは

飛鳥井が可哀想でやっぱり酷い男だな、という感じは否めない。

 

何度も何度も麻生のせいで傷ついて、

それでも社員のためにと割り切ろうとして頑張る飛鳥井は

健気でせつない。


でもやっぱり火崎さんの書かれる(受)キャラなので、

男気があるというか、

すぐに悪い方に考えるのではなく、

いいほうに考えて心配したりするところ、いい人です。

 

あと途中で

もしかしてこの人はいい人ではないのかな、

と予想はしていた人が

思っていたより嫌な人に描かれていたのは

ちょっと微妙な気持ちになったけれど、

 

麻生はまあ結局

酷い男と思える部分がありつつも愛ゆえ、

という部分がちゃんと最後にはわかるので

読後感は悪くないお話でした。


それから最後の最後、高校時代の同級生らしく、

お互い言いたいことを言い合い、

どちらも引かないやりとりも楽しかったです。