火崎勇/別れてから好きな人

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別れてから好きな人 (ピアスノベルズ) [ 火崎勇 ]
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isbn:4914967251


★4.5<3カップルのお話。
それぞれの話はリンクしてはいないけれど、どこかわかりにくい愛情を持った(攻)というのが共通しているかな?という感じ。

一つ目は高校時代恋人としてうまくいっていたと思っていた相手から、突然卒業と同時に別れを切り出され呆然とし、八年たってもまだ、その傷の癒えない男の勤める結婚相談所に、別れを切り出した男が結婚相手を紹介して欲しいとやってくる。
八年たっても、まだ癒えない傷を残した相手が、幸せを求めて自分の前に現れたことに怒りを覚え、自分が突然捨てられたことで傷付いた同じだけの傷をつけてやりたい衝動にかられる。

嫌なことは嫌だと言える、直情的な方が捨てられた男。
そして捨てた男は、まるで突然の別れを一方的に切り出すような冷たいことをする男ではなく、自分に自信がない、少しでも他人を幸せにすることで自分が安心するような男。
そんな男が突然の別れを切り出したワケ自体は、わかってしまえばよくある話だれれど、その問題を二人がどうクリアして再びつきあうことになるのか、というあたりは、おもしろく読めたと思う。
それに、捨てられた傷を苛々と抱える男は、とても怒っていて捨てた男を責めて傷つけようとするのだけれど、その怒りの分だけ愛情がものすごく感じられたのもよかった。

二つ目は危険な小遣い稼ぎをする反面、意外に堅実な面を持つ男が、出逢った危険な香りのする男の罠の共犯者になっていたつもりが、罠にハメられてしまう。
踏み込んではいけないと思う危険な男に、けれど好きだと言われてハネつけることが出来ないほど、すでに惹かれていた、という感じのお話。
危険な男はいい男そうで、ちゃんと愛も感じられるけれど、これは私的には今ひとつだったかな。

表題作の三つ目は、恋人がいるのに、抱けないときにはどうでもいい女を抱いていた酷い男に限界を感じ、責められたことで、本当に好きだった恋人を自分から捨ててしまった男。
本当は好きな相手の負担にならないように、もてあました欲望をどうでもいい女に発散していただけ。
けれどそんなことが通用しないことは時が経つにつれわかるようになったけれど、今さらどうすることも出来ず、ただ自分がいかにその男を好きだったのかを思い知らされる日々を送っていた。
そんなとき、偶然の再会をする。
そして自分とつきあっていたときのことはもう忘れたという。
当たり前だろうと思う。
けれど、最後の最後に、あのときは本当に遊びでつきあっていたのではなかったのだと告げるぐらい許されるだろうかと思う。
「別れ」のやり直しぐらいして、自分の中でケリをつけたいのだと。

馬鹿な男の方も散々不器用ながら、そんな男に散々振り回された男も、虚勢を張るところが本当に可哀想なぐらい健気ですごくよかった。
その後の二人のお話も、レーベルにふさわしい題材になっているのか、(攻)キャラが大人のオモチャを買ってくるところから始まるけれど、下品にならず、お互いが相手を、とても愛していることが真摯に伝わってくる甘いお話になっているのもすごくよかった。