火崎勇/恋愛取引(ディーリング)

突然現れた社長の隠し子の真偽を確かめる事を命じられた、秘書の喜多川。
社長のスキャンダルを狙う専務派・成沢の目を避けながら、ようやく接触を図ったというのに、その男・森村は、出生の決定的な証拠を出そうとしない上、「俺は危険な男だから、お前さんを食うのも簡単だ」と言って、喜多川を戸惑わせるばかり。
そんなある日、偶然出会った成沢との関係を誤解した森村に、喜多川は襲われてしまい―!?火崎勇が贈る、働く男たちの駆け引きラブ。


 

角川ルビー文庫:2003.3 甲田イリヤ isbn:4044490015

 

★4.5<相手が信頼に足る相手であるか。
今回は「信じる」ということモチーフに、会社の派閥争いを巡る駆け引きがおもしろいお話。
ワイルドで強引なところのある森村の言うことをそのまま信じていいのか、真面目で誠実な喜多川がその真実に迫ろうとする。

信じたいのに信じられない展開のわりに、せつないお話、というテイストより、どういう結末が待っているのか種明かしが楽しみなお話としての方が比重が大きく感じたことについては、恋愛メインの話が好きな私としては残念に思うものの、傲岸不遜な森村も、ウブで天然な喜多川も好感の持てるキャラだったし、2人の気持ちが通じ合う場面での間合いはさすがに上手さを感じるし、全体的に安定して面白く読めた。