依田沙江美/千の花(真夜中を駆ける2)

真夜中を駆ける2
画家の勇気と編集者の昇の恋人関係は継続中。勇気に見合い話が舞い込んできたり、昇にお気に入りの新人作家が現れたりと一方では相変わらずの喧々囂々ぶりだが、人の生き死にや出会いを経験することで、常に引き際を考えていた昇に心境の変化が生まれる。「70になったら籍でも入れようか」誤解と偶然がもたらした結婚式で、共白髪まで添い遂げることをついに誓い合った勇気と昇。運命でも約束でもなかった長い恋が結実する――。
シリーズ第2弾、描き下ろしつき。


 

二見書房 シャレードCM 

 

★4.5<身も心も通わせあう恋人として順調なはずの勇気と昇。
けれど二人の気持ちには互いにどこか微妙な距離感があって危うい。
ワーカホリックな昇が連絡を寄こさないのは単純に仕事のせいなのか、それとも自分を避けてのことなのか……?
また大事なことを自分に話すことがなかった勇気の気遣いは自分を思ってのことなのか、それとも勇気にとって自分の存在はその程度のものなのか……?
互いの家族から見合いという言葉が出る年頃の二人が、それぞれに不安を抱えながら、それでも一緒に暮らすという話に踏み切るには大人過ぎて。
もどかしいながらも、出来る中で最良を選ぼうとしていくところが何だかほんわかといい感じ。

それにこの二人はどちらもが同じだけ相手を想っていて、同じだけ不安で、同じだけどちらも男だなと思えるところがいい。
昇にメロメロで、昇のお願いならつい聞いてしまうようなところがある勇気だけを見てしまうと、昇を中心に勇気が振り回されるような関係に見えて、昇は昇で、芸術家の勇気を包み込むように愛して心配してあげていたり、暴走しかける野獣をうまくなだめるようなところもあったり。
二人の関係を、(攻)の勇気が昇を引っ張っているようで、意外と(受)の昇が勇気を引っ張っているような。
どちらか一方に偏ることのない、男同士らしい恋愛が見えた気がした。