火崎 勇/私の知らないアナタが欲しい


 

オークラ出版プリズム文庫 (2008/11)/杉原チャコ

 

★4.5(-)<姉の結婚によって跡取りではなくなった和緒は、今なら目付け役である倉部に告白しても、和緒の立場を慮って断ることだけはしないだろうと決意し実行。
結果、倉部は自分の恋人になってくれ、こんなに嬉しいことはないと思ったけれど、いつまでも倉部は和緒が誘う以外自主的には恋人らしい接触を仕掛けてくることはなく、和緒の不安は募るばかり。
そんなとき、倉部の友人の後藤が現れ、後藤のプライベートな思惑もあって倉部の気持ちを二人で確かめようと持ちかけられる。
和緒は仕事のこともあって後藤と頻繁に会うようになるが…。

倉部も確かに悩んだのだろうとは思うけれど、今回は和緒に同情するかも。(苦笑)
和緒は本当に恋愛面でも我儘を言うことなく、倉部の態度に不安を抱えるのにそれをストレートに訴えることもせず、恋人と言ってくれる倉部の言葉を健気にも必死に信じようとするし、仕事の面でも微妙な立場にありながら、もちろん自分のためでもありつつ、倉部をそばにおけない立場になってしまわないようにということもあってしっかり頑張っている。
それもこれもが和緒にとってはすべて倉部のため。
なのに当の倉部ときたらすべてが和緒の受け身。
これでは和緒が不安がるのは必然。

ただ最後に目付け役である立場を脱ぎ捨てた倉部は男前でしたね。(笑)
そんなに熱い人だったんだ、と驚きましたが、あれほどに愛されることに和緒も異存はないようなのでまあ万々歳?
それにしても後藤さん、まあ都合のいい人というか、悪気はないようなのですがある意味とんでもない人でもありましたねー。
最後の和緒に対しては、もっとあのときは頭に血が上っていて申し訳ないことをした、というような謝罪する姿勢がちらりと欲しかったように思いますが、まあ倉部にそれなりの報復を受けているので(笑)あれはあれでいいのでしょうか。
何にしてもプライベートとでも仕事でも一緒の二人。
二つの異なる立場をうまく使いながらいつまでも幸せに過ごしてほしいものです。