火崎勇/初恋の未来(さき)

『―――いつもお前の言葉は俺を傷つける。

俺の心に爪を立て、簡単に引き裂いてしまう……』

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初恋の未来(さき) (Leaf novels) [ 火崎勇 ]
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リーフノベルズ : 2006.8 小山田 あみ ISBN : 4434078461
 
 

★5<高校時代、親友以上の関係にありながら、卒業するまでの期間限定のつきあいだと言われていたことから、泣く泣く身を引き、その恋を8年たってもまだ引きずっていた天国(あまくに)が、その忘れられない初恋の相手・梶と8年ぶりに再会する。

設定としたら、お互いに誤解して擦れ違っていたお話、という特に目新しいお話でもないのかもしれないけれど、今回のお話の、顔は笑って心で泣いて、という気丈なふりした天国の健気さや不憫さがとにかくものすごくせつない。

まず再会してすぐ、相手は自分のことなど嫌がっているかも、と不安になりつつ、完全に拒絶されるまではと、せっかくの偶然出会えた男と、少しでも長くいたいのだと、平気そうなふりで一緒にいられる時間を延ばそうとするところ。
断られたらショックを受けることがわかっていても、それでも少しでも長くいられる方法があるのなら、どんな言葉が返ってきても我慢できるのだと捨て身になってまでも一緒にいられる可能性のほうを選ぼうとする天国がせつない。

そしてそんな健気な天国の試練は、8年たった今もなおとても好きな相手なのに、笑って梶の恋の応援をしようとするところ。
痛くて苦しいけれど、それでも8年間離れていて相手のことを知る術もなかった時よりは、相手が幸せになれるように相手の恋を応援するだけでもいいのだと思う気持ち。
でも相手の負担にならないように、自分の気持ちを悟らせないように好きな相手の恋の応援をすることは身を切られるように辛く、ストーリー的にお互い擦れ違って遠回りしているだけなのだろうとわかりながら読んではいても、いつまでも一縷の望みを捨てられないでいる天国が、これでもか、これでもか、というほどボロボロになる姿がなんとも苦しくてせつなくて涙が止まらなかった。

すごくすごく気に入った本なので、いつも小冊子付きで売っていると知っていても、特に小冊子を集めることはせずにいたけれど、この本だけは小冊子付きを買えばよかったなぁと思えたのがちょっと心残り。