火崎勇/嘘ツキの恋


 

アクアノベルズ : 2005.6 よしながふみ ISBN : 4775505696

 

★4<学生時代、友人の一人としてそばにいながら、密かに思い続けた男・梶沢との信じられない再会。
そして思いもかけない嬉しい展開に夢のような気持ちになるけれど、梶沢が時として優しい嘘をつくことを知っている園田は、あまりに都合のいい梶沢の言葉に深く傷ついてしまう。

相手のことがどんなに好きでも、もしかしたらその言葉が嘘かもしれない、と疑い始めるとキリがなく、不安の渦に陥ってしまう。
大好きな梶沢の言葉を信じたいのに信じることが出来ないようなそれまでの梶沢を見てきた園田の複雑な気持ちもよく伝わってきたし、そのことで苦悩し、悲しむ園田は辛い。
ただ「優しい嘘」だけをつくのであればもうちょっとよかったと思うのだけれど、最初「些細な嘘」もつくという話が梶沢のポイントを下げたというか、余分だったかな、と思えてしまった。

後半のお話では、「優しい嘘」についての梶沢の考え方と園田の考え方の違いが浮き彫りになる。
人を傷つけないためにつく嘘はありだと言う梶沢と、それでも大切な人には嘘を付いて欲しくない、正直に話して欲しいと切望する園田。
どちらが正しいとは言えないけれど、そのときの園田が梶沢に気持ちをぶつけるシーンがすごくよかった。
確かに梶沢の言い分もわかるけれど、園田にこんなふうに言われてしまったら、こんなふうに気持ちを見せ付けられたら、男として黙って話し合いをしている場合じゃなくなるかな、と。(笑)

梶沢の「ええかっこしい」の部分はかっこ悪いのだけれど、それでも世の中には、こういうダメな男にどうしても惹かれる人も多分いて、そういう人にはどうしても梶沢がどんなにダメな男でも好きなのだと思う園田の気持ちに共感できるのではないかなと思えた。