火崎勇/ブリリアント

何でも叶えてやりたかった。―――けれど彼の一番の望みは、俺が唯一してやれないことだった。


 

雁川せゆ 徳間書店 キャラ文庫 : 2006.7 ISBN : 4199004025

 

★5<ライバルと言われながらも親友としてもいい関係でいた男・飾沢に密かな想いを抱いていた紺野は、ある時身体を悪くしてしまい、もうライバルでいられなくなってしまう自分を知ってしまう。
好きな男が自分に求めるものを持たなくなってしまった自分には側にいる価値がないだろうと、好きな相手の元から何もかもを捨てて離れることを決める紺野の身を切られるようなせつなさ。
どうして自分が、という途方に暮れる思い。
何を引き換えにしてもいいから、と願っても叶わぬ運命。
どれだけ願っても身を切られる思いで好きな男の側にいることをあきらめるしかないのだと、平静を装いながら好きな男と過ごす最後の時間を終わりにさせていく今野が本当に辛くせつない。

今回は飾沢が大企業の御曹司で俺様なキャラなのだけれど、大人の余裕のあるふてぶてしい俺様、というのではなく、ちょっとガキ大将みたいなストレートさと素直さのある俺様で、紺野を泣かせてしまったことが自分のせいであることを知ればきちんと素直に非を認める部分に好感が持てたし、紺野も、後半、唯一信じられるはずべきことが、そうではないかもしれないと知らされた後、あまりの辛さにふらつきはしたけれど、それでも最終的には甘やかせてくれる男に流されたり自分から身を引いたりということは出来ないほど飾沢が好きなのだと、ちゃんと告げられる素直さがあるところにも好感が持てた。