火崎 勇/夢の終わり


 

【いさき李果】【笠倉出版社 /クロスノベルス】【2009年4月刊】 isbn:4773099542

 

★4.5<記憶喪失の朝里悠一の前に自分を引き取ろうとする男・木津川。
ついていくしか選択肢もなく木津川の屋敷に連れて来られたが、失ってしまった過去の悠一に対する強い憎しみを向けられる悠一はわけもわからぬまま木津川に強姦される。
それでも木津川は木津川なりの苦悩を見せ、今の悠一を過去の悠一とは別物と考えてそばに置いてくれるようになり…。

いきなり理由はありそうながらも強姦から始まる中で、悠一もそんな木津川を拒絶するわけでもなく、好意を持っていくなんて、よくあるありえない安いBLものかな、と心配したけれど、悠一の失くした記憶の絡んだミステリー色の強いBLという感じかな?

悠一を酷く憎み、強姦までするほど傷つけたいと憤りながらも、今の悠一は今の悠一として傷つけたことを複雑に感じ不器用に別の事象と割り切ろうと苦悩する木津川に好感が持てた。
悠一も、何もわからないまま、それでも自分を見ようとしてくれる唯一の木津川に少しでも何かをしたいのだと頑張ろうとして、少しずつ知ってしまう自分の過去を思えば許されない立場である惨めさを感じたりするところが本当に不憫でした。

全体的には悠一の過去がすごい展開、になってしまうお話だったでしょうか。
最後はうまくいき過ぎ感がないわけでもないけれど、前半の苦悩する木津川がよかったので好き度は★4.5に。