幼い頃に不慮の事故で兄を亡くした萩原は、とにかく平凡で何事もなく過ごすことが一番だと思っていた。
誰かに嫌われること、迷惑をかけることを恐れ、いつも俯きがちになっていた。
ところがある日、上司に連れていかれたバーで、瀧沢というバーテンダーに「背筋を伸ばせ、視線を外すな」と突然厳しい言葉を浴びせられる…。
不安と、祈りと、決意が交錯する―大人の純愛ボーイズ・ラブ。
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コバルト文庫:2003.10 香雨 isbn:4086003309
★4.5<幼少時、兄を亡くしたせいか、社会人になっても過保護ぎみな両親を持つ奏。
他人に嫌われることを恐れるあまり、いつも自分に自信がなく、おどおどしてしまう態度は、時に人を苛つかせる原因にもなってしまう。
そんなある日、社の先輩に連れて行ってもらったバーで、初対面のバーテンダー・瀧沢から自分でも気にしている態度について強く指摘され、内心反発するものの、再会し話しをするうちに瀧沢の励ましをもらいながら自分を変える努力をするようになる。
日常、自分の何気ない行動が、他人にどう思われているか不安になることはあると思う。
それは些細なことで気になりだすかわりに、気の持ちようで平気にも変われるもの。
作中、不安にかられる奏を疎ましく思う、多田に近い感覚の方が読まれると、主キャラに入りこめないかもしれないけれど、メッセージ性のあるお話しになっていたと思う。
ただ最近の火崎さんの作品は以前からの作品同様とてもいい作品だとは思うものの、私的にこだわる「恋愛」以外の部分が話しのメインになってしまっていることが多いように感じられ、少し残念に思える。