一穂 ミチ/Don't touch me

代理で行った合コンで悪酔いしたところを介抱して一泊させてもらった連。
潔癖症気味な連には珍しく、レトロな雰囲気の漂う初対面のその男・長谷川の家は悪くなく、長谷川自身も鷹揚で居心地のいい相手に思えたが、翌日仕事関係で再会した際、とんでもなく失礼な態度をとってしまい…。

 


 

【高久 尚子】【新書館ディアプラス文庫】【2010年5月刊】isbn:4403522394

 

★4.5(-)<普通は隠しておくべき感情を隠せず白状なことを言ってケロっとしている頭の悪い正直さを持つような連。
けれど連が幼い頃の体験から根底に抱える不安はせつなく、長谷川なら傍にいてくれるのだ、と言ってもらえたのに、それを裏切るようなことをしてしまい謝っても謝りきれないと自分を責める展開はせつなくて辛い。

また普段沸点の低そうな穏やかに見える長谷川も、特殊清掃員だったことで人が離れていく経験もしていて、また同じ思いはしたくない、と言いだすあたりはせつない。

前半は連視点、後半は気持ちがわかりあってからの長谷川視点。
照れる連の奇妙な行動はおかしくて可愛い。
でもその後の展開では連がよかれと思って白状した内容が長谷川には理解できず大喧嘩。
そこに長谷川の体調が絡んで仕事のことにも触れたりして、ちょっと話は重め。

でもすぐ家出したがる猫の行動の連なりの解釈はすごくよかったし、なんだか二人の組み合わせは奇妙なのにしっくり、というか、うまくデコとボコが合わさっているというのとはちょっと違って、合わさっていない部分も多いのにうまく寄り添えているというか。
そんな不思議な空気感のある二人のお話でした。

ただすごく好きなお話かというとやっぱりBLとしてはちょっとテーマが重めかな。
あと抱き合っていても甘くなりにくい二人の雰囲気とか。(笑)
二人らしいといえばらしいのだけれど、もうちょっと甘い要素も入っていたら読後感が違ったかも。

【特殊清掃員・長谷川宗一】【消臭剤研究部署に勤務・園田連】【同い年・27才】