ショコラノベルズ 1997.6 岬ひろし ISBN:4883023125(kindle版)
・あらすじ・
二十代の若さで写真雑誌の編集長を務める雛乃紫のもとに、長い間交流のなかった従兄弟・北条朝日が突然転がり込んでくる。子供の頃女の子と間違われて一度、そしてその後高校時代にあらためてもう一度プロポーズされて、『一芸に秀で、家の一軒でも持てる甲斐性がなければ“結婚”などできない』と答えて気まずい別れをして以来、久しぶりに会う朝日に紫は戸惑うが、当の朝日はそんなことなどすっかり忘れたような様子で…。
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・レビュー・
★4.5<最初は、紫の仕事の話しと並行して
朝日の謎めいた部分が見え隠れすることで、
簡単に最後のオチまで見えてきそうなところが、
読んでいてイマイチだなぁと思いながら読んでいたのですが、
紫が自分の気持ちを認め、
朝日に取った行動の全てが、
紫の気持ちのどういう裏返しの行為であったのか、
が明らかにされていくあたりで、すっかりハマってしまいました。(笑)
▼ネタばれになりますが▼
好きだと言われ、答えた返事は、
確かに言葉を受け取る側には、
ていよく、あしらわれたように聞えたかもしれない。
でも紫自身もまだしっかりとした自覚はなかったものの、
朝日を拒絶していたわけではなかったのだった。
結婚の条件に、冗談のように大きな条件を提示したのは、
そんな条件をつきつけられて、なお、
自分が欲しいのだと示して欲しいから。
欲しいものを欲しいと言いたくても、
紫の、プライドも高ければ、
欲しいものを与えられなかったときの
孤独感に絶えられるほどの強さもない、
凛とした物言いからは一見窺い知ることの出来ない臆病な紫。
望むならくれてやるけど、自分からは欲しがらない。
朝日を無くしてしまうことを恐れて本音を言えない、
屈折した自分を、それでも欲しいと乞い願ってくれるのか。
複雑な想いを抱えた紫という不器用なキャラに、
とても好感が持てたのと、
逃げ出したかに見えた朝日が、
ちゃんと紫の条件をクリア出来る男へと成長を遂げ、
また、その条件をクリアしてまで
紫を真剣に欲しいのだと想う気持ちの強さもわかって、
いいハッピーエンドなお話しでした。
ということで私の好き度は★4.5
足らないポイントは、あまりに見え見えなオチと、
失礼ながらイラスト。
朝日は許すとして、紫の方、「紫」という名前のついた
美人編集長さんにはちょっと見えなかったのがとても残念。