火崎勇/書きかけの私小説

キャラ文庫:2004.12 真生るいす ISBN:4-19-900333-9

・あらすじ・

休筆中のベストセラー作家・木辺克哉の原稿が欲しい――。新人編集者の中澤貴にとって、兄の親友で憧れの幼なじみでもある木辺は、実体験を元にした作風で人気の恋愛小説家。もう一度、筆を取ってもらおうと、貴は毎日木辺の元に通うことに!! けれど、幼い頃の延長で懐く貴に、なぜか木辺はよそよそしい。しかも小説の話となると「おまえには読ませられない」と冷たくて!?


 

・レビュー・

★4.5<兄の親友が好きで、

その作家である男の書くものが好きで、

その作品を自分の手で本にする仕事がしたくて

編集員になったほど木辺を思っている貴。


なのに木辺は

せっかく何作かは売れたというのに、

ある時から筆を折ってしまい、

いくら貴が声をかけても

書いたものはあるらしいのに発表しようとはしない。


木辺をそこまで頑なにさせるものは何なのか。
秘めた気持ちを抱えて

貴はしつこく木辺に迫るが……。

 

これは私の好きな誤解もののストーリーの上、

口が悪いようで、

実は繊細に周囲を気遣えるタイプの(攻)キャラも大好き。


無垢だと思っている貴を気遣いすぎて、

心配しすぎて、自分から遠ざけようとしておいて

苦悩する木辺が、貴視点のお話からも見え隠れしていて楽しい。

 

それに貴も、必死になって気持ちを隠したり、

逆にここぞという場面では

自分の気持ちを何とか伝えようと懸命になるところも可愛いし、

計算なく木辺が

目を見張るような殺し文句を言う場面もあったりして

甘さも楽しい。

 

二部作の前半のお話は

本当に私の好みのお話のストライクゾーンど真ん中をつかれた感じで

すごくよかったのだけれど、後半のお話はちょっと微妙。


貴の周囲に新しい脇キャラが登場。
木辺が貴に嫉妬することで貴を喜ばせる反面、

そんな木辺が心配するような相手ではないと

タカをくくって無防備なところが個人的には苦手だったし、

オチとしては心配していたような展開とは違うものになっていて

 

安心した反面、逆にそっちの話はいったいどうなってるんだ!?

と気になってしまい、何だか気が散ってしまった。

 

それでも可愛くて強い貴と、

開き直ってしまえばケダモノの木辺のやりとりはかなり私好みで、

好き度も前半のみなら迷わず満点の★5


後半のお話も

もしリンク作でこの続きを読む事ができたら

満点でもいいかと思える★4.5