火崎 勇/優しい痛み 恋の棘


 

【亜樹良 のりかず】【リンクスロマンス】【2011年1月刊】isbn:4344821297

 

★4.5<仕事関係で知り合った斎藤に口説かれ、恋人となった蟻田。
照明器具デザイナーの蟻田は斎藤に才能を見込まれて出資者となってもらっているが、だからこそ甘え過ぎてねだっているように思われたくなくて自分なりの線引きをしていた。
恋人だからよくしてもらっている等と周囲に思われたくなくて関係を秘密にしているために何かあっても相談する相手もおらず、斎藤が隣のオフィスの神谷と二人で歩いているところを目撃したというのに、その話に水を向けた蟻田に二人でなど会っていない、と斎藤に嘘をつかれて混乱してしまう…。

性的なことにももっと積極的になってくれたら嬉しい、と言われても抵抗が合ってできず、なのに、そんな蟻田をそれならそれでもいい、と譲歩してくれることにも負い目を持つ蟻田が、斎藤に飽きられたくなくて内心でオロオロする中、斎藤の嘘で本当に傷ついて別れを覚悟するところがせつない。

斎藤は斎藤で、余裕のある大人の男として振る舞っていたけれど、最後の最後にキレる面があったりして、それだけ絶対蟻田を手放したくないと強く思われていてよかったな、と思えた。

ミニストーリーのほうには斎藤視点での蟻田との出会いからの描写があって、その後の二人のやりとりに。
まだ同居に渋る蟻田の事情を知った時の二人の気まずさが微笑ましかったです。(笑)

余談ですが、「人魚姫じゃないから」を思い出させるようなお話でした。