火崎 勇/彼氏の彼


 

祐也 オークラ出版 プリズム文庫 : 2007.5 ISBN : 4-7755-0951-9

 

★4.5<同僚で友達の小川から、彼だと紹介された相手・佐枝に惹かれ、いけないと思うのに、その佐枝からも小野とは本気の付き合いではなく、伊丹を好きになったから付き合えと言われてしまう。
けれど伊丹は小野の気持ちが佐枝と同じわけではないことを知っているがゆえに、佐枝を好きになってしまうことはタブーだと、自分の気持ちにフタをしてしまうが、馬鹿正直で真面目で頭もいいけれどどこか無防備なところもある伊丹は、言葉巧みで人を圧倒するような雰囲気のある佐枝を突き放そうとするのになかなか諦めてはくれず、またその強さに惹かれてしまう―――。

ああ言えばこう言う、どうすれば逃げられないかを熟知し、先回りして絡め取ろうとするズルイ男。
伊丹は何とかそんな佐枝をかわそうと応戦するけれどかなわない。
人の彼氏を好きになってしまうお話、ということで、かなりせつないお話かと最初は思っていたのですが、佐枝のほうが随分積極的に伊丹を口説こうとする分、思っていたのとは少し違ったお話だったものの、随分経験豊富そうで強引な男である佐枝が、意外と本気の相手には余裕のないあたりに好感が持てたし、そういう佐枝の気持ちを知って、誰にでも優しい生真面目な、傍から見れば優等生な伊丹が、それを否定し、自分を必死に手に入れようとする佐枝を嬉しいと思ってしまう欲深さを自覚するあたりもおもしろかった。