火崎勇/コンクリ-トを破って

腕利きの美容師として順風満帆な道を歩んでいた三海は付き合っていた女の裏切りで仕事も地位も金もすべて失ってしまう。
自棄になり泥酔したまま路上に身を投げ出した三海を拾ったのは人肌恋しさに身体の関係を持った相手、中学時代の同級生である囲だった。
無愛想で何を考えているのかわからない囲の腕に抱き竦められた瞬間、卒業文集に『コンクリートになりたい』と綴った彼の真意を思い知らされることになった三海だが…。
固いコンクリートの下に封じられていたひとつの感情が偶然の再会によって再び息吹きを取り戻す―!!表題作に書き下ろし続編を加え、更に短編『眠れる花』を収録。
理性では決して答えを出せない狂おしい恋心を描いたセンシティブ・ロマンス作品集、待望のリリース。

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コンクリートを破って (ピアスノベルズ) [ 火崎勇 ]
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ピアスノベルズ 2003/12 宮本佳野 ISBN:4914967421

 

★4.5<ちょっと調子が良くて人肌恋しく抱き合うことが好きだった三海が、中学の時たくさん相手をしてきた中で唯一自分の欲望を先走らせるのではない抱き方をしてくれた一人の同級生。
クラスでも一人でいることが多く顔もスタイルもよかったのに、何故か自分から三海に「やらせろ」と声をかけてきた囲だった。
けれど卒業と同時に出会うこともなく社会人になり順風満帆に過ごしていたはずの三海は、とある出来事で職も恋人も失ってヤケになっているときくしくも囲に再会してしまう。

激しい感情に応えたい気持ちはあるのに、どう考えても対等な立場になれるまでは今の気持ちをうまく伝えることが出来ないと結論付ける三海と、大事にしたい気持ちはあるのに、不安が大き過ぎて強く束縛してただ甘やかすことでしか気持ちを表すことが出来ない囲。

ああ、今度はそういう角度できたか、という感じで、意外な角度から恋愛の難しさを捕えた話だと思う。

同時収録の短編は、学生時代から友人でありながら、成り行きで身体の関係も続けていた三谷と小塚のうち、三谷が結婚することになったと告白するところから二人の関係が微妙になってしまうお話。

モテる三谷と、人付き合いの苦手な小塚。
自分の気持ちをひた隠し、三谷の結婚話にも笑って祝福してしまう健気な小塚がものすごくせつなく、結局三谷も小塚を好きだったわけだけれど、どこか傲慢ではなく、そうまでしてしまう臆病さに好感が持てて、短編ではなく一冊の長編で読みたかったお話だった。