火崎勇/五つの音

鵡川ヘッドハンティングされた新しい会社でかつての恋人、久遠と再会する。高校時代、鵡川は久遠と付き合っていたのだが卒業と同時に酷い言葉で久遠を傷つけ捨てたのだった。だが久遠との再会で理屈ではなく久遠が欲しくなった鵡川は少しずつ彼を追いつめて行く…!? 

 

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五つの音 (Shy novels) [ 火崎勇 ]
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シャイノベルズ:2004.8 よしながふみ ISBN:481301030X

 

★4.5<高校時代つきあっていたのに、手ひどい言葉で別れた恋人・久遠と再会した鵡川
久遠の愛が重く感じられ、久遠を傷つけはしたものの、嫌いになって別れたわけではなかった鵡川は、仕事も出来る男に成長した久遠を手に入れたいと思うようになるが、すでに久遠には決まった相手がいた……。

最初は鵡川計算高い男で、読んでいて好きになれるかなぁと思ったけれど、よくよく読んでみると、ただ冷たい意地悪な男だったから久遠を切り捨てたわけじゃない、▼ネタばれ▼になりますが、自分が同性である久遠を好きでいることで、久遠が周囲からのいろいろなことに押しつぶされることを避けたかったという想いがあったり、自分が久遠を不幸にしてしまう原因になってしまうことが怖くて、愛、なんていう重い言葉を使えなかったという理由が見えたりして、最初の印象とは随分変ってくる。

また意外にも最後は、無様になってまでも久遠へ必死に気持ちを伝えようとするところもよかったし、久遠がやっと自分を受け入れてくれた途端、甘い(攻)キャラになってしまったところもよかった上に、これまた意外にも、随分と照れ屋さんな(攻)キャラになってしまったところが、すごくかわいく思えてよかった。

終わりのほうで久遠が泣きながら皮肉な笑いを浮かべるシーンでの久遠の気持ちはちょっと私にはわかりづらかったけれど、仕事の話としても、ヘッドハンティングされた鵡川が、相手先の職場で久遠と再会し、仕事でもパートナーを組むことになる中、久遠が驚くほど鵡川もそれなりの仕事ぶりを見せるあたりの話しもおもしろく読めたし、小田垣という新しい男が出来た久遠に対して、いつかそれでも自分にもチャンスがくるはずだと、いい仕事ぶりを見せ、久遠へのポイントを稼ごうとするのに、実際には自分などただの独り相撲なのだと思い知らされる場面があったりして、(受)キャラではよくある展開ながら、(攻)キャラが打ちひしがれるというのはあまり今まで読むことが無かったので、余計せつなく感じたのもよかった。