火崎 勇/恋愛の仮面


 

【いさき 李果】【クロスノベルス】【2010年2月刊】isbn:4773099895

 

★5<会社組織にしたとは言っても背中に龍を背負う正真正銘のヤクザである松永が惚れたのはひょんなことから知り合う漫画家の砂田。
松永には珍しいほどの行儀のいい付き合い方には部下も呆れるほどだったが、それでも松永は砂田を大事にしていたし、それなりに距離も縮まっていると感じていた。
なのに松永がヤクザだと知った途端砂田の態度は豹変し…!?

表向きコンサルテイング会社をしていても、内情は敵対する組と睨みあうような緊張感もある松永の周囲。
そんな中での砂田とのスローペースでの恋愛事情が対比的でおもしろく、あれほど松永がヤクザらしくないほど砂田を気遣い、大事に大事にセッティングしてきたというのに、突然の豹変には本当にビックリで松永が気の毒で仕方がなかったです。

また豹変してからの砂田の態度の変わりようといったら、もう本当に容赦がないというか、そこまでされてもよく松永が腐らずに追い続けたことに感心するし、砂田に危険が及んだと思った時の、あの酷い心配と後悔。また究極の二者択一で、それでもやっぱり砂田を守ることを選んだ松永の覚悟は本当に男前。

その後、砂田の事情がわかってしまえば、どうしようもないことだったかと納得もできたけれど、それでもまたそれがわかったときの松永が、あれほどの人が、砂田を守る為に悲しい嘘までついた場面は胸がギュッと痛くなるぐらいせつなかったです。

全体的に別に砂田は嫌いなキャラではなかったけれど、やっぱり事情があったとしてもあの松永を傷つけたことで個人的には複雑な部分もあったものの、松永のことはとにかくめちゃくちゃ気に入ってしまいました。