リーフノベルズ 2001.8 みささぎ楓李
・あらすじ・
槙野渡は高校でクラスメイトになった高羽悟の笑顔に惹かれ、好きになった。やがて友達としてつき合い始め、卒業まであと半年になったとき、想いを告げた渡に、戸惑いながらも「俺も」と応える高羽。そして2人は、大学進学を機に一緒に暮らすことを約束した。それから10年あまり経って―――突然高羽の前に現れた、渡の弟、槙野航平。あの頃の渡にそっくりな航平に驚く高羽だったが・・・・・・。重なり合う心の壁を繊細なタッチで描いた、ハートウォーミング・ラブストーリー。
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・レビュー・
★4(-)<あらすじの通り、繊細で、悲しくせつない、
涙が何度もじんわりと滲んでしまうような。
悲しみを胸に抱えているのに泣けず、
柔らかな笑みを浮かべてしまう高羽の、
内側に脆さや儚さを抱えながら、
封印でもしているかのような頑なさを見せるところがせつないお話し。
▼ネタばれになりますが▼
高羽の本当の笑顔を奪ってしまったのは、
同居寸前に起きた渡の突然の交通事故による死。
あらすじを読まずに読んだ私は、
渡と高羽の恋愛ものなのだと思って読んだので、
一章が終わるとき、その渡の死にショックを受けたものの、
全体からいくと、それほど渡の存在は重くない。
確かに引きずっているものの、
それより航平の存在が大きいので、
過去の人という位置で読めた。
でもやっぱり高羽がかなり渡のことを引きずっているのが、
本当にせつなく、またそれが抜け殻状態ではなく、
ただ穏やかな笑顔を見せるのがせつない。
そして、それは航平が、
高羽の本当の感情を引きずり出したいと思う衝動になり、
本当は心からの笑顔を見たいものの、
泣き顔でも怒った顔でも、
それが高羽の本心からの表情であるものを見たいと思うようになる。
なのに高羽の殻は、10年という月日は重く、
航平が、どうやって高羽を解放してやりたいと思っても泣けない高羽に、
最終的に優しくない方法で高羽の殻を蹴破ってしまう。
その方法が読む人によっては引っかかる人もあるかもしれないし、
確かに優しくない方法ではあるけれど、
でもそれだけじゃないものが伝わるから、
ギリギリのところでやむを得ない展開と納得出来る範囲かもしれない。
そんなお話し。
ハッキリ明快ハッピーエンドじゃないところは残念。
アンハッピーエンドというわけではないけれど、
今後に期待、という感じで終わってしまっているので。
でも一気に読ませてくれる上手さと
せつなさという点はプラスポイント。